一人一芸 大会
週刊「街ニュース」第276号(1998年5月28日発行) 

「ただ今から、『一人一芸大会』をはじめます。最初に開会の挨拶を則子さん(「街」所長)お願いします」。司会は直ちゃん(「街」メンバー)&直子さんのツイン直子コンビ。

「皆さん今晩は。『一人一芸大会』ということで『街』の方たち、関町ケアネットワークを利用している皆さん、地域のお客さん、たくさんの方がお見えになっています。今回は・日本チャリティ協会から助成金をいただきまして、『地域で生き生きと暮らすために』というテーマで皆 さんの隠れた才能を思う存分発揮して下さい」と則子さんが挨拶。

  久良木さんが乾杯の音頭

1、クーちゃん(元「街」の職員)と由利ちゃん(元「街」メンバー)の『待つわ』。「素晴らしい声で楽しませていただきました」(*以下、司会者の感想)2、スーさん(「街」メンバー)が『ハロー・マイ・フレンド』。「アカペラなのに、すごく上手に歌ってくれました」

3、イチローさん(「街」メンバーの)の創作劇『鬼が島Part4』、共演スーさん、大ちゃん、ナレーター直子さん(「街」職員)。ミヤちゃんがとても嬉しそうでした。「自作の衣装、独創的なシナリオ、直子さんの流暢なナレーション、すべてが重なって素晴らしい劇でした。……ここでお口直しに」一同大爆笑の中で次のハマちゃんを紹介。 

4、ハマちゃん(「街」メンバー)がアルトサックスで、バッハ作曲の『G線上のアリア』を。「格調高いサックスの音色に一同、騒然としてしまいました」

5、「ムサイ男たちが続いたので次に目の保養に可愛らしい直ちゃんが歌います」ということで直ちゃんがル・クプルの『ひだまりの詩』。「とても清純でした」の声。 

6、受付の松ちゃん(「街」メンバー)が『神田川』。「神田川というより、ちょっと酔っ払った石神井川という感じでしたね」 

7、大ちゃん(「街」メンバー)がスピッツの『空も飛べるはず』。「スピッツとはひと味ちがうブルドッグみたい」ここで『飛べなそう』のヤジ。 

8、リカちゃん(養護学校生徒)が『木枯らしに抱かれて』『赤いスイートピイ』を「元気で、明るく大きな声で歌いました」 

9、アンちゃん(病院患者会)が『メダカの学校』の替え歌。「子供の頃に戻って、可愛かったです」 

10、佳恵さん(地域の当事者)が『恋する夏の日』。「ハツラツとして、はずんでいましたね」 

11、二宮さん(他の作業所メンバー)が、前後開脚と『柔道一直線』。「陸上部なのに何故、この『柔道一直線』なんですか?」    

その後で自己紹介がありました。一芸を披露しなかった人では、リカちゃんのお母さん、飯田寿司さんも参加。 

12、佐賀さん(病院職員)が『蒼い稲妻』。「さすがミスター慈雲堂。歌も上手でした」 

13、中島さん(地域の社長)が『すきま風』。「流し目が、なんとも、いやらしかったです」 

14、ハネやん(チャンプルー街)が『大阪でうまれた女』。「さすが関町のキムタク」「すごくうまかったです。泣かせてくれました。アハハハ」

15、クラやん(ご存知)。懐中電灯を使った余興の後で「たでたで、がきつ……『逆さ月夜』」。「来年から、関町のキムタクと呼ばれたい」なんて言ってました。    

早く帰る人への表彰式が行われました。 

16、直子さんがギターの弾き語りで『まぼろしの翼とともに』。「普段のパワフルな富田さんから想像もできない、さわやかな唄声でした」 

17、安西さん(関町ケアネットワーク相談員)が『ハイサイおじさん』の伴奏でタコ踊り。「お酒が足りないのに、恥を捨てていました」「外で会ったら、そばに近寄りたくないです」 

18、則子さんの三線、クーちゃんの歌、ミヤちゃん(福祉作業所メンバー)の踊りで『安里屋ユンタ』。「初めて聴く三線、ステキでした」 

19、辻さんのギター演奏で『花』。ミヤちゃんが自分で振り付けをした踊りを披露。多くの人たちが踊りだした。 

20、「キムタクよりも、まよなかしんやよりも愛する人」直子さんの夫が、弾き語りで吉田拓郎の『どうしてこんなに悲しんだろう』。「これが富田さんの夫? 嘘でしょう。信じられない。美男と野獣」と言ったとか……。 

21、金巻さん(「街」気まぐれボランティア)が『あなたの心に』。 

22、レナちゃん(地域の女子大生)、マキちゃん(レナちゃんの友達)、健さん(板ピー甥)の3人が作ったバンド『ZIB』がSMAPの『夜空のむこう』。「本日の出演者の中で、今日のために練習したのは彼らだけでしょうね。前日にも秘密の練習をしていたとか」         


いよいよ第2部の開始  

23、金本さん(チャンプルー街のお客さんでジャズ演奏家)のジャズ・ハーモニカ。「一つの楽器で、こんなに素晴らしい音の世界を作りだせるなんてビックリしました」 

24、タッくん(養護学校生徒)&レナちゃんが『ドナドナ』をデュエット。「兄姉愛にあふれたお二人でした」 

25、マキちゃんの母・妙子さんが尾崎豊の『アイラブユー』。「男の人の歌を女性ボーカルで、じょうずに唄ってくれました」 

26、突如、腕相撲大会が始まった。O直子 vs スーさん× O健 vs 直子×  O健 vs 安西さん× 不敗の安西さん、ついに破れる。 

27、ここで、ただ今、売り出し中の大滝秀治さん(ジャズギター)と辻さんのジョイントで『フライミートゥザムーン』、その他の演奏。 

28、小宮山さん(ベーシスト&マンガ家&自営業)が小さいギターを抱えて堺すすむの『何でかフラメンコ』。「半ズボンにサンダル。とても印象に残る演奏でした」 

29、真打登場。辻さんのライブ。ロック・メロディーでみんなが踊りだし、会場が騒然。   

再び、直子&夫、が『遠い世界に』を格調高くデュエット。

則子&ハネやんが『浪花恋しぐれ』を下品にデュエット。      

ZIBの演奏。       

辻&金本さんが松山千春の『恋』をデュエット、

ハマちゃん『また逢う日まで』を熱唱。  

30、板垣さん(養護学校職員)がまよなかしんやの『アカバナー』。「歌っている時の顔が怖かったけれど、感動的でした」 

31、金沢さん(デイケア・メンバー)の『座頭市』。「『街』のキャラクターに欠かせない、いい味を出していました」 

32、金巻の息子さん(高校生)がクラシック・ギターで『ハ長調練習曲』。辻さんの2番弟子。本日がデビューの日。「則子さんと直子さんに見つめられ、手がふるえてしまい、超キンチョーしちゃった」とか。なぜか1番弟子のフッ君は、登場せずでした。

ここで90分テープの3本目が終了。いつ果てるともなく、「一芸大会」は延々と続けられたのでした。

感想です

いきなり、初めてやった司会。キンチョーして、何を言おうかと歌や芸を見ながら考えていました。でも私が言ったことが少しは受けていたので、ホッと胸をなでおろしました。大勢の人の前で歌を唄うのは気持ちよかったです。それから第二部に入ってみんなが踊りだした頃、私は泡盛のストレートを3杯も飲んでいたので、調子に乗って踊ってしまったのですが、この時は恥ずかしさもどこかへ飛んでいってしまって、とても楽しかったです。このような楽しい集いをまた持ちたいですね!  <直子>   

「一人一芸大会」。何の芸もない僕にとっては地獄のような響きで……当初は、フザけるなと思っていたが、始まってみると楽しい・楽しい。何とか1曲歌ったが、他の人のを見ていると自分も練習してれば良かったと後悔下。ずっと受付で「腐って」ビールを3本も飲んだが、後で泡盛を2杯飲んで吐きそうになってしまった。   <松ちゃん>   

思ったよりも、食べ物がたくさんあり、「街」に関係するみんなが、明るく・楽しそうなので、これからは新人の自分も楽しんでいこうと思いました。<大助>  

劇「鬼が島」は意味が伝わったかどうか分からないが、僕は情熱で燃えていました。とても楽しかった。皆さん、ありがとうございます。 <一郎>        

私はお祭りが大好きで、タンバリン片手にはしゃいだり、野次を飛ばし応援の意味もあったのですが、気にさわった方、ごめんなさい。ついつい楽しさのあまり、帰るのが遅くなり家についたのがちょうど12時。興奮して3時まで眠れなかった。それにハネやんの言ってた冗談が面白くて、家についても思い出して笑いが止まりませんでした。<スー>  

久しぶりに人前でサキソホーンを吹いた。曲はバッハ作曲の『G線上のアリア』だった。ちょっと酒の席では合わなかったみたいだった。これからこういう会があったらどんどんサキソホーンを吹きたいと思います。とにかく、夜おそくまで盛り上がって楽しい一日だった。<ハマちゃん>  

これなら自信を持って、知人に「楽しいから来なよ」と言える会でした。<二宮さん>        

当事者、「知的障害者」とその家族、地域のお客さん、医療関係者・スタッフなど年齢も様々な人たち35名が集い、本当に楽しいひとときを(延々、6時間を越えたのをひとときというのかしら?)をすごすことができました。みんなの感想から見てもわかるように、出演者の一人一人が「本当に楽しかった」「私たちは、ここ関町で生き生きと暮らしているんだよ!」という叫びが聞こえたように思いました。

あるお母さんは、「家が遠いの、もう帰らなければいけないのですが、帰りたくないですネ」と時間の許す限り「一人一芸大会&ライブ」を過ごしていました。 

「調子が悪いから」とか、「落ち込んでいるから}言っていた人たちも本当に生き 生きと解放された姿がそこにありました。そして、この大会&ライブを境にメンバーの『街』での表情までもが違ってきた人もいます。<則子さん>   

 この「一人一芸大会&ライブ」を通じて、「街」のスローガンである「『障害』のある人も・ない人も、支えあって共に生きる街」づくりという活動が、この6年間の中で、この関町地域に着実に根づいていることを確信できた一日でした。こうした場で「芸」をすることは、上手下手ということと関係なく、その人の姿が浮かび上がってくる。普段見られない、その人の本来の姿が見れた。時々しか会わないリカちゃんがマイクを握った途端に生き生きとして唄う姿を見て、とても感心した。自分の出番の用意で見れなかった人の「芸」を、ビデオを見て楽しむことにしよう。こうした会を何度も続けることで、才能が出てくる人がいるかも。次の機会を楽しみに待っています。<安西さん>       

この夜の模様を撮影したビデオを、地方に住んでいる人に送った。その人は「街」のインターネットのホームページの中にある、日本中の誰でもが書き込みのできる掲示板『心の広場』の利用者。早速、電子メールで返事が来ました。 

「今、ビデオ全部見終わりましたあ。まず最初に思ったことは、ビデオに映っている人達はみんな、なんて表情豊かで、生き生きしているんだろうってことだったの。前より落ち着いているとはいえ、今の私は無表情で生きてるんだって実感がない…。親にも「表情がない」って言われてるし、心の底から笑ったことも、ここ何ヶ月もない……」

「一人一芸大会&ライブ」は、彼女が表現したような「生き生きとした」集いでした。<ハネやん>

 

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